基礎英単語の学習成果は覚えた単語の数では測れない!

英語の単語を覚える時に学習成果の指標として、
「覚えた単語の数」がよく使われます。
この指標は 基本単語を習得した後でしたら、妥当かもしれません。

ただ、英語を学び始めたばかりの人にとっては、
この「覚えた単語の数」にとらわれ過ぎると、
実際の成果との大きなギャップにより、
余計な焦りや慢心を生む原因になり、
その後の英語学習に支障をきたしかねません。

なぜそのような大きなギャップが生まれるかといえば、
初期の基礎単語は各々の単語によって、
「覚える」という事の意味合いと難易度が大いに異なる
からです。

今回は、なぜ「覚えた単語の数」を単語学習のモノサシとして使うと、
英語学習を始めたばかりの人の気持ちを惑わすことになるのかを
詳しく解説していきたいと思います。

それによって、

「必死に勉強してるのに、まだ600語くらいしか覚られないんだけど、
私って英語学習に向いてないのかな・・・?」

と悩まれる方の焦りと不安を取り除くとともに

「たった2ヶ月で2000語も覚えられた!
ひょっとして俺って凄い?」

と実は基礎単語を十分な深さで学ばないままにしてしまい、
後々の学習で伸び悩む事態に陥りかねない方の
注意を喚起していければと思っています。

そして、この基礎単語の単語ごとの「習熟度」のバラつきに対して、
「逆転英語ガイド」ではどう対処していくべきと考えているのかを
ご紹介したいと思います。

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なぜ単語ごとに「覚える」難易度が違うのか?

では、なぜ基礎単語は単語ごとに
「覚える」ことの意味合いや難易度が違ってくるのでしょうか?

それに答えるためには、
まず単語を「覚える」とはどういうことかを振り返る必要があります。

単語を「覚える」ということの定義は人により様々ですが、
「逆転英語ガイド」が考える「実戦で使える単語の覚え方」は、
「【イメージ!?】英単語を使える形で覚るための脳への刻み方」
で詳しく解説いたしました。

かいつまんで振り返りますと、
よくある「英単語とそれに対応するいくつかの日本語を結びつける」
という単純な覚え方ではなく、
その単語のスペル・音・意味イメージの三者を脳内で強く結びつけ、
そこにその単語の様々な用法とその例文を関連付けしていくことが、
「単語を覚える」ことなんだという解釈をご紹介しました。

また、「覚える」という言い方は、0か1かの両極端になってしまうので、
基礎単語の実際の学習の様子を表す言葉として適当ではないかもしれません。

それぞれの単語につき、その「習熟度」(あるいは「経験値」)を高めていき、
ある一定の「習熟度」を超えると、その単語を「マスター」する
このような言葉のイメージの方が
基礎単語の学習プロセスをよく表しています。

この単語を「覚える」ことを「マスター」するという見方に変えると、
最初の質問である、なぜ単語ごとに「覚える」難易度が違ってくるのか、
に答えを出しやすくなります。

単純に、単語ごとに「マスター」するまでに
「習熟」しておかなくてはいけないものの質や数が違う
からです。

英語学習の中盤以降で覚える単語の間には、この差はさほど無いのですが、
序盤で覚える単語の間には歴然とした差があります。

Januaryのように「1月」とだけ覚えればそれで終わりな単語から、
get・have・theのように基本的な使い方の習得もそこそこ大変な上に、
「マスター」しようと思ったら上級者でも難しい単語まで、
習熟難易度が全く異なる単語が入り乱れているのが「基礎単語」です。

では、その「基礎単語」の中でどのような単語が難しいのか、
そしてそれはなぜなのかを、ここからさらに詳しく見ていきます。

機能語(文法で習うような単語)の「習得」は難しい

英語の単語には大きく分けて2つのグループがあります。
機能語内容語です。

機能語とは、

  • 助動詞(can, will, mayなど)
  • 前置詞(in, from, atなど)
  • 限定詞(a, the, someなど)
  • 接続詞(and, when, althoughなど)
  • 特殊な副詞(however, therefore, otherwiseなど)

などのように、文章の中で機能的な役割を果す単語、
言いかえれば文法を学習する時に習うような単語のことです。

それに対して内容語とは、

  • 名詞(cat, event, imaginationなどモノ・事柄・概念などを表す単語)
  • 動詞(sit, write, createなど動作・作用・状態などを表す単語)
  • 形容詞(nice, tall, beautifulなど名詞のみを修飾する単語)
  • 副詞(silently, often, veryなど動詞・形容詞・副詞を修飾する単語)

などのように文章の中身・詳細を表すために使われる単語のことです。

さて、この機能語と内用語のどちらが
「習得する」のが難しいかというと、
断然に機能語の方が難しいです。

なぜかといえば、既に説明しましたように、
機能語というのは英文法で習う様々な事柄を機能させるための
ツールのような単語だからです。

したがって、英語と日本語の単語での1対1対応の関連付けなどで
簡単に覚えられるものは少ないです。
その単語がどういう文法的な機能を果すのかを、
知識と実践の両面から把握できるようになって、
ようやく「習熟」のためのスタート地点に辿りつく感じです。

そこからそれぞれの単語に込められている
用法ごとの微妙なニュアンス・イメージ・使い分けなどの感覚を
実際の英語に触れながら体験的に覚えていったり、
そのような感覚がまとめられている書籍などから学んだりして、
徐々にそれらの機能語が自然な形で使えるようになって、
「マスター」の状態に近づいていきます。

だいぶ長くなってしまいましたが、
機能語の「習熟度」を上げていくのはこれだけ大変だということです。

そして、約300ほどある機能語の大部分が基礎単語に含まれています

このため基礎単語を学んでいる際は、
覚えるのに大きな苦労の必要な機能語と
簡単に覚えられるappleのような単語が混在しているので、
単語学習の成果を単純に「覚えた単語数」で測ることは、
学習者側から見た労力と成長の度合いの実感に合わず、
学ぶ人を惑わせることになってしまうのです。

内容語の品詞ごとの難しさの違い

機能語が難しいのならば、内用語は易しいのかと言えば、
そうとは言い切れません。
なぜならば、内用語の品詞によって、
用法の覚え方の難しさが変わってくるからです。

大体の傾向として、上から難しい順に

  • 動詞
  • 形容詞と抽象的な名詞
  • 具体的なモノを表す名詞と副詞

となっています。

動詞を覚えるのが一番難しい

動詞が一番難しい理由は、機能語と似た理由です。
つまり、その単語の意味だけではなく、
使い方までも覚えなければいけない
場合があるからです。

どの動詞でも、

  • I walk everyday. (SV。主語+動詞のみで目的語は無し。)
  • I kicked a ball. (SVO。主語+動詞+目的語。間に前置詞や副詞無し。)

というこの2つの形の使い方は大抵持っています。

そのため、この2つの形の主要な用法の意味は覚える必要がありますが、
使い方のパターンは決まっているので、
これらを覚えるのはそこまで難しくありません。

ただ、これ以外の

  • I’ll send him a message (SVOO。動詞の後に目的語が2つ。)
  • The bleach turned my clothes white. (SVOC。動詞の後に目的語+補語。)
  • My brother took my money from me. (前置詞/副詞を使用)
  • The terrorists got away with their crimes. (句動詞)

のように単語ごとにどの形を持っているかが変わるものを覚えていくのは、
やや大変になってきます。(特に後者2つ。)

そして、もう一つ動詞を覚えにくくしている点を挙げると、
他の品詞よりも意味が文脈によって変わる度合いが強い場合が多いので、
中心となる「意味イメージ」を抽出するのに
より苦労するということでしょうか。

この「使い方で覚えることが余分にある」ことと
「中心となる意味イメージが抽出しにくい」ことがあいまって、
動詞は他の品詞よりも「習得」するのが難しくなっています。
(特にgetやtakeなどの基本動詞は。)

形容詞と抽象的な名詞も意味イメージがつかみにくい

形容詞と名詞は、単語ごとにそれを使うべき
形式の違いというものが全くありません。
それが無い分、動詞よりは覚えやすくなっています。

ただ、この2つの品詞はどちらも「モノを表す名詞」に比べると
視覚的イメージは得にくいものなので、
多岐に渡る文脈で使われる単語だと、
その中心となる意味イメージを抽出することは、
動詞と同じくらい難しい場合があります。

したがって、これらの用法に習熟するのは、
動詞と次に説明する品詞の中間程度の難しさと言えます。

具体的なモノを表す名詞と副詞は一番簡単

内用語で一番覚えるのが楽なのがこの2つです。

car, banana, pencil のように具体的なモノを表して、
視覚的なイメージを持ちやすいものは、
それほど多岐に渡った意味を持つものも少なく、
非常に覚えやすくなっています。

次に副詞ですが、内用語としての副詞の大部分は、
beautifullyのように、元となる形容詞+lyの形になっています。
このため、元となる形容詞の意味さえ把握していれば、
副詞の意味も自動的に分かる
ことになりますので、
これもある意味非常に簡単と言えます。
(元となる形容詞の方を覚えるのは多少大変ですが。)


と、以上のように、
英語の単語は内用語の間においても
品詞ごとに覚える内容も難易度も違っています。

ですから、これも機能語の時と同じように、
「習得」するのが一番難しい動詞と
一番簡単なbananaのような名詞を
同じ1語と評価することは妥当ではない
ということが
お分かりいただけたと思います。

基礎的な単語ほど覚えるのが難しい理由のまとめ

ここまでの説明でも徐々に感じていただいているかもしれませんが、
単語を覚えるのは、実は基礎的なものであればあるほど難しいです。

これまで述べたものも含めて、理由を思いつく限り挙げてみますと、

  • 「覚える」のが難しい機能語の大部分が含まれている。
  • 複数の品詞に渡った用法を持っている単語が多い。
  • 同じ品詞の中でも様々の異なる文脈・用法で使われる。
  • 日本語の訳語との単純な対応では意味が捉えにくい単語が多い。
  • 単語が短いので似た音の単語と混同しやすく逆に覚えにくい。
  • 派生語の元となるものが多いので意味を一から覚えなくてはいけない。
  • 多くのフレーズや慣用句の一部になっているのでキリが無い。

と、基礎単語の持つこのような性質が
それらを実用できるレベルで「覚える」のを難しくしています。

基礎だから簡単だと思って、
中盤以降に学習する単語と同じ要領で単純な覚え方をしてしまうと、
応用が効かなく使いにくい形で頭の中に入ってしまいます。

かと言って、最初から基礎単語の一つ一つを
完全に「マスター」するようにじっくり学ぼうとすれば、
とてもではありませんが難しすぎて挫折してしまいます。

では一体、これらの基礎的な単語を学ぶ際には、
どのような心構えや姿勢で向きあって学習していけばいいのでしょうか?

基礎単語の学習成果は覚えた「用法」の数で測るべき

覚えた単語の数では測りにくい基礎単語の学習成果は
どのように見ていけば、より実態に正確な進行具合が
分かるようになるのでしょうか?

「逆転英語ガイド」が推奨するのは、
覚えた「単語の用法」の数で測るということです。

例えば、catchという単語を例にすると

  • 【動詞】捕まえる。 I caught a fish in the river.
  • 【動詞】病気にかかる。 I caught a cold yesterday.
  • 【動詞】聞き取る。 I couldn’t catch your name.
  • 【名詞】キャッチボール。 I played catch with my son last weekend.
  • 【名詞】裏・引っかけ。 What’s the catch for this sale?

のようにかなり多岐に渡った用法があります。
(実は、やり方を覚えると、コアとなる一つの意味イメージから、
他の全ての用法を思い浮かべることができるようになるのですが、
それはまた別の機会に解説したいと思います。)

これらの用法を全部覚えたらcatchという単語を覚えたとするのではなく、
これらの用法一つ一つを学習の単位と捉えていくのです。

それぞれの用法と例文の意味が分かるようになり、
それらが後に別の場面で使われた時に認識できるようになったら、
その用法をある程度は「覚えた」としていきます。

そのような状態になった用法(またはその例文)の数を記録していけば、
基礎の単語を学んでいる段階でも、
自分が学んだ量とその成果がほぼ比例する関係になり、
自分の学習がどれくらい進んでいるかというのを
より実感と近い形で測れるようになると思います。

フレーズや慣用句もそれだけで一つの学習単位に捉える

基礎的な単語(特に動詞)には、
それらを含むフレーズ・句動詞・慣用句が数多くあるのですが、
これらはその元の単語の用法の一つして覚えるよりも、
むしろ別の(関連性のある)単語として扱う方が
成果は測りやすくなるのではないかと思います。

例えば、

「put up with ~ 」 → 「〜を我慢する。〜に耐える。」

のような表現はputの用法の1つと考えるよりも、
put up withという単語(動詞)なんだと考えると、
より学習成果がシンプルに見えてくるのではないでしょうか?

用法単位で学習成果を測ることのデメリットは?

この単語やフレーズの用法を覚えるごとに、
単語学習の成果として計上していく方法は、
どれだけ自分が積み上げてきたかは把握しやすいです。

しかし、ゴールまで後どれくらいかを把握するのは
逆に少し難しく
なってしまいます。

なぜならば、用法の数をベースにしている教材がほぼ無いからです。

ですので、現状の対策としては、
単語のリストを作って、その横に「4 / 7 」などと、
その単語の用法で、今までに覚えたものの数と
最終的に覚えたいものの数を記録していき、
習熟度リストのようなものを自分で作るのが一つの案です。

あるいは、いっそゴールまでの距離は気にせず、
単に覚えた用法の数の伸び具合だけを見て自分の成長具合を実感し、
モチベーションを維持するための数字として割り切るかです。

しかし、やはり学習する側としては、
後どれだけ学んだら次のレベル・ステージに進めるのか、
ということを知りたい
ものです。

それに対応するためには、
教材を用意する側がより手間をかけて、
そのようにデザイン
していかなくてはいけません。

残念ながら、現状ではそのような教材はほぼ存在しませんが、
「逆転英語ガイド」が基礎のための単語リストを用意する際には、
この用法の数ベースで学習進度が分かるような
デザインにしていきたいと思っています。

まとめ

さて、だいぶ長くなってしまいましたが、
とにかく基礎のための単語を学習している間は、
「覚えた単語の数」では成果をきちんと測れないから、
「覚えた用法の数」で測った方がいいよ
、という話でした。

「単語の数」では測れない理由は、基礎単語には

  • 機能語が多く含まれている。
  • 内用語にも基本動詞など多数の用法を持った単語が多い。
  • 無数のフレーズや慣用句の一部にされている。

のような性質があるからということでした。


この長い記事をわざわざ書いたのは、

「早く3000語くらいは覚えないと、
英語学習のスタートラインにも立てないかも。」

と巷に流れている英語学習情報にとらわれて、
焦りを感じている学習者に、

「そんなことはないですよ。
地道に基本単語の用法を一つずつ
しっかり覚えて使っていけるようにすることが
英語の基礎を身につけるための近道
です。」

とお伝えしたいからでした。

このメッセージが伝わって、
皆さんの単語学習の道を歩む「旅」から
不安を少しでも取り除けられれば、幸いです。

それでは、また!

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