【フォニックス・リエゾン】英語の発音で学ぶべき6分野(中編)

さて今回は、前回の
『【音節・音素の発音】英語の発音で学ぶべき6分野(前編)』
に引き続き、英語の発音で学ぶべき重要な6分野の中の
フォニックス (phonics)リエゾン (liaison) について
紹介と解説をしていきます。

フォニックス (phonics)

フォニックス (phonics)という用語は、
各所で様々な意味で使われているので、
定義するのが難しいのですが、「逆転英語ガイド」では、

「単語のスペルとその発音の間にあるルールのまとめ」

という意味で使っています。
(他の意味との関係については、後ほど触れたいと思います。)

フォニックスのルールの例とその意義

では、このフォニックスのルールとはどんなものなのでしょうか?

cakeという単語の読み方を例に見てましょう。
この単語の読みは/keɪk/(ケイク)ですが、
なぜ/kæk/(キャック)や/keɪkɛ/(ケイケ)ではないのでしょうか?

それはフォニックスのルールの一つに

「単語の最後が子音+eで終わっていたら、そのeは読まないで、
その前の母音(a)はアルファベット読み(/eɪ/(エイ))で読む」

というものがあり、
cakeにそれをあてはめると/keɪk/になるからです。
(ちなみにこのルールは有名で、
“silent e” (無音のe)という特別な名前まであります。)

このようなルールをまとめて覚えておくと、
初めて見る単語でもその発音の推測が容易になりますし、
一度見たことのある単語なら、その発音を思い出したり、
逆に覚えてる音からスペリングを思い出すことも楽に
なるので、
単語やフレーズなどの学習もはかどるようになります。
(特に母音の読み方に関するルールが役に立ちます。)

英語の正しい発音のためには、
それぞれの音素がどんな音かを知っていたり、
その音を出せるように練習するのも大切ですが、
それ以上に、

「単語を読むのにどの音素を使うのか」

ということを知って、間違えないことが重要です。

どれだけ、きれいに /r/ や /æ/ (appleのa) の発音ができても、
それらを使うべきでないところで発音してしまっては、
伝えたい単語や文章を伝えられなくなるということです。

ですから、このフォニックスの学習も英語の発音学習の中で、
他の要素と並んで一角を成す重要な項目です。

捕捉:様々な意味で使われる「フォニックス」という用語

先ほど述べましたように、フォニックスには複数の意味があります。
ここでは、他でどのような意味で使われているのか
少しだけ触れておきたいと思います。
(興味の無い方は、次の「リエゾン」の説明まで
飛ばしてしまってください。)

フォニックスには、主に使われている意味として、

  • 解析フォニックス (analytic phonics)
  • 合成フォニックス (synthetic phonics)

の2つがあげられます。

どちらも英語圏の幼稚園〜小学校低学年の子供に、
文字と音声のつながりを教えることにより、
新しい単語でも、その読み方を推測して
読めるようにしていくための教育法です。

両者の違いをあげると、
前者は、既に発音を知っている単語から音を分析して、
似たようなパーツを持つ単語の発音を類推させるもの。
後者は、アルファベットの文字そのものに発音をあてて、
その音をつなげて(合成して)単語を発音させるもの、
というようにそれぞれアプローチが異なります。

どちらも前述のフォニックスのルールと組み合わせることで、
まとまった教育プログラムとなるのですが、
日本における英語学習情報の文脈で
単に「フォニックス」と言った場合、
合成フォニックスの前半の「アルファベットから音素への対応」
(a・b・c・dをアェ・ブ・ク・ドのように読むなど)
の部分のみに注目した説明がよく見られます。

このように、「フォニックス」という用語は、
使っている人によって異なる意味で使われることがありますので、
どの意味で使われているのかに注意を払う必要があります。

リエゾン (liaison) ・音の変化

これまでにご紹介した、
音節・音素の発音・フォニックスを習得すれば、
ほとんどの単語を、辞書に載っている発音の通りであれば、
ほぼ正しく発音することができるようになります。

しかし残念ながら、辞書の通りの音と現実に使われている音では、
別の音に聞こえるぐらいの違いがある場合があります

なぜなら英語の音は、文章やフレーズの中で単語が使われた時、
その前後に来る音に引きずられて変化するからです。

この英語の「音の変化」のことを、
一部の人はリエゾン (liaison) と呼びます。
(元來、リエゾンは後述のリンキングと同じ意味の用語ですが、
英語学習・教育の文脈では、
この「音の変化」を意味して使われることも多いので、
ここでも使わせてもらいました。
ここからは、「音の変化」の記述で統一します。)

この英語の音の変化は、

  • リンキング(linking/連結)
  • リダクション(reduction/脱落)
  • 音素自体の変化 (フラッピング/弾音化など)
  • 音素の挿入

の4つの主な種類に分けられます。
これらを1つずつ簡単に紹介していきます。

リンキング (linking/連結)

”Can you ~ ?” を「キャン ユー」ではなく
「キャニュー」になるように、
二つの単語を続けてスムーズに言うために、
前の単語の最後の音と後の単語の最初の音を
つなげて読むことを「リンキング」と呼びます。

(先述したように、このリンキングのことを指して
リエゾンと呼ぶ場合もあります。ややこしいですが。)

リダクション (reduction/脱落)

本来だったら発音すべき音が消える、
あるいは聞こえないくらいに発音がかすかになることを
「リダクション」と呼びます。

このリダクションの中にも、様々な種類のものがあるのですが、
ここで一つだけ例をあげますと、

「同じ系統の子音が2つ続いた場合は、
どちらかの音が消えて一つの音のみ発音する。」

というような変化があります。
どのようなことかと言うと、

“What time ~ ?”

と言う時に、二つ続く/t/の音を別々に出すのではなく、
一つにまとめて発音して、
「ワット タイム〜?」ではなく
「ワッタイム〜?」のようになるということです。

音素自体の変化 (フラッピング/弾音化など)

これは、発音すべき音素自体が別のものに変わる現象です。
この種類の代表的な音の変化がフラッピング(flapping/弾音化)と言って、
アメリカ英語の “t” の発音で起こります。

よく見かける例で説明すると、

  • “water” を「ワーター」ではなく「ワーラー」。
  • “little”を「レトゥ」ではなく「レロゥ」。

のように、t の音の前後を母音またはr/lの音で挟んだ時に、
その t の音が、舌足らずのdのような音、
あるいは日本語のラ行の子音のような音に変化します。

(アメリカ英語の発音の特徴とも言うべき変化なので、
仮にこの音を発音できなくても知っておかないと、
アメリカ英語を聞き取るのが相当困難になります。)

音素の挿入

最後の音の変化の種類は、
本来は無いところに音が現れて挿入される変化です。

一番代表的なのは、

「母音が2つ続いた場合は、それらを繋げて言いやすくするために
弱めの /w/ や /j/(yの音) が間に挿入される」

というものです。

例えば、”Do it.”のo と i にwが挿入されて、
“dʊ ɪt” (ドゥ ェッ)のようになるところを
“dʊwɪt” (ドゥウェッ)のようになるのがそうです。

音の変化はルールとして覚えるべき?

以上の4つが、英語の音の変化な主な種類となります。

それぞれの種類の中に、さらに細かいルールのような
音の変化のパターンがあるのですが、
それらを全部頭で覚えなくてはいけないかというと、
そんなことはありません。

最初に一通りの知識として見知っておく必要はあります。
しかし、その習得は頭に記憶して覚えるのではなく、
実際の音読やリピーティングなどの際、
聞こえる音と自分の言ってる音がどうしても違うと感じた時に、
その都度これらの音の変化の知識を復習して、
聞こえる音に自分の発音を近づけていく経験を少しずつ積みながら、
体と口で覚えていく
アプローチを取るべきだと思います。

この音の変化は実際の文章やフレーズの形になった場合の
英語の音を知るためには欠かせませんので、
音素の発音やフォニックスと同様にしっかり学んでいくべき項目です。

まとめ

以上で、英語の発音の学習の中でも重要な6分野の内の2つ、

  • フォニックス
  • 音の変化(リエゾン)

のご紹介を終わります。
この2つの分野はそれぞれ、

  • 「フォニックスを知ることによって、スペルと音の関係性を把握する。」
  • 「音の変化のパターンを知ることによって、辞書的な発音と実際の発音のギャップを論理だてて理解する。」

という発音学習の中での重要な役割を持っていますので、
やはりどちらも欠かせない必須分野です。

英語の発音の学習をしたことが無い、または始めたばかりの方には、
あまり馴染みの無い分野だったかもしれませんが、
これをきっかけに、これらも発音学習の一部と
考えていただければ幸いです。


さて次回は、いよいよ6分野の最後の2つ

  • 「プロソディー」
  • 「発声の方法&トレーニング」

について解説していきますので、お楽しみに。

それでは、また!

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