ある一つの新しい単語と出会った時に、
それをどのように頭に入れていくかについて、
以前の「英単語を使える形で覚るための脳への刻み方」
という記事で解説しました。
今回はその次のステップとして、数多くの英単語の中から、
どのような単語とどのように出会っていくべきなのか、
(特に英語の基礎に必要な単語を学習する際には)
ということに焦点を当てて解説していきます。
基礎段階ではどのような単語と出会うべき?
では、基礎の段階で出会うべき単語の内容と数は、
どのようなものなのでしょうか?
まず、それらの単語の特徴として、
- この後、どんな用途に英語を使うにしても必ず使う。
- 生の英語コンテンツを使って学習する際に頻出する。
- それ以降の単語・文法・発音の学び方のモデルになる。
などが揃っている必要があります。
このような特徴を持つ単語グループの参考になるのが、
「無料なのに効果的な基本英単語リストのまとめ」
でもご紹介した、GSL (General Service List)のような
英語に出てくる頻出度をベースにして作られた単語リストです。
このGSL全体では約2000の見出し語がありますが、
その半分の1000語(+その派生語)ほどでも、
話し言葉の84%、新聞の75%の単語をカバーできます。
ですから、このようなリストを参考にして、
よく使われる単語を優先的に学習していけば、
それほど多くの単語を覚えなくても、
英語の輪郭がすぐに分かるようになりはじめ、
その後の英語学習へのとっかかりができていくわけです。
最初の頃に出会うべき単語の数は約2000語
これだけではあまりに漠然としていますので、
最初の頃に出会うべき単語の種類と数の内訳を示すと、
大体次のようになります。
- 基礎的な機能語 約200語
- 基礎的な内容語 約1000語
- その他 約800語 〜
- 数や月・曜日などの固有名詞的だが頻出の単語
- 視覚イメージが得やすい「モノ」の名詞
- カナ発音を直せばすぐに使えるようになる単語
- 自分の目的用途に頻出する単語・専門用語など
合計で約2000語と言われると、
気が一瞬遠くなりそうになるかもしれませんが、
きちんとした単語の覚え方と出会い方のステップを踏まえれば、
それほど難しいものでもありません。
次の項では、これらの単語にどのように出会っていくのか
について話しを深めていきます。
基礎となる単語との最初の出会いは計画的に
単語との出会い方は大きく分けて2つのタイプがあります。
英語のネイティブな会話や文章などの自然な文脈の中で出会う場合と、
単語集などの学習教材でまとめて計画的に出会う場合です。
このどちらの出会い方がいいかというのは、
英語教育者や学習者の間でも議論が分かれるところですが、
「逆転英語ガイド」では、
- 基礎的な単語との最初の出会いは計画的に。
- 中級以上の単語とは極力自然な文脈の中で出会うべき。
しかし、試験などの短期目的には計画的にした方がよい場合も。
という方針を推奨しています。
理想を言えば、全ての単語と自然に出会うのが一番です。
その方が、各単語に対する自分の興味と関心が最大の時、
しかも実例となる文章&状況が目の前にある時に覚えられるので、
その単語の印象を深く持てて、忘れにくくなるからです。
しかし、基礎単語をこれから覚えようとしている人は、
手持ちの語彙がほとんど無い状態ですので、
多読・多聴などで自然な単語との出会い方をしようと思っても、
そのままでは意味が全く分からず、
辞書を調べようと思っても膨大な時間を費やすことになります。
これはこれで一つの(サバイバル的な)勉強の仕方ではありますが、
ほとんどの人に向いたやり方ではないと思いますので、
基礎単語だけは例外的に計画的な出会いをお勧めしています。
また、中級以上の単語の場合でも、
「試験まであと2〜3ヶ月しかないのに、
これから数千語を覚えないといけない」
のように時間が限られ、かつその試験さえ乗り越えてしまえば
単語は大部分忘れてしまっても構わない、
という状況であれば単語帳でまとめて学習するのも
その試験の合格という目的のためには有効な手段です。
ただし、このように覚えた単語は、
長い時間が経つと大半が頭から消えてしまい、
残ったものもすぐには記憶から取り出せず、
リスニングやスピーキングでは使いにくいものになりがちです。
長期的な英語力の向上のためには、
その後に多読や多聴を重ねて自然な形で再会して、
記憶定着のためのアフターケアをする必要があります。
(この辺りも、人との出会いや付き合いに似ています。)
「逆転英語ガイド」での基礎単語との出会い方
基礎単語とは計画的に出会った方がよいとお伝えしましたが、
具体的にどのように出会っていけばいいのでしょうか?
その一例として「逆転英語ガイド」における
基礎単語との出会い方をご紹介します。
「逆転英語ガイド」では大きな流れとして、
次の3つのステップに基本単語の学習を分けています。
- 発音の学習と並行して、覚えやすい単語は学習してしまう。
- 文法の学習と共に、機能語と重要な基礎的な内用語を覚える。
- 残りの基礎的内用語は、まとめて単語学習の中で覚える。
どういうことなのか、それぞれについて解説を加えていきます。
1. 発音の学習と並行して、覚えやすい単語は学習してしまう。
少し上の方で、基礎単語の「その他」の中で紹介した
- 数や月・曜日などの固有名詞的だが頻出の単語
- 視覚イメージが得やすい「モノ」の名詞
- カナ発音を直せばすぐに理解・使用できる頻出単語
のように意味は非常に覚えやすく、
難しいのは発音だけというような単語は、
発音の学習と並行して学んでしまいます。
このようにするのは、次のような理由からです。
- 意味を覚えるだけでは学ぶ意義を感じられない単語も
発音の学習も兼ねてるということでモチベーションを維持できる。 - 文法学習の例文に使える単語を事前に準備できる。
- 文法がまだあまり分からない時のサバイバル英会話では、
これらの単語を発音できるだけでも非常に役立つので実践的。 - 英語の初心者でも学びやすい。
2. 文法の学習と共に、機能語と重要な基礎的な内用語を覚える。
「逆転英語ガイド」の考える英語の基礎学習では、
発音の基礎を一通り学んだ後に、
文法を学び始めることを推奨しています。
したがって、先程の項目の通り、
発音学習と並行してある程度の単語を学んだ後に、
文法と共に機能語+重要内用語(主に動詞)を学んでいきます。
助動詞・前置詞・接続詞のような機能語や基礎動詞は、
日本語の訳語もあてはめにくい上に、
イメージも慣れないうちは得にくいので、
文法学習の中で、その機能面から学んでいき、
使いながらその意味と感覚をつかんでいく方が得策です。
ここで覚える機能語+基礎動詞と、
発音と一緒に覚えた名詞を組合わせると、
それだけでも簡単な会話はできるようになるので、
成長感も味わいやすい順番となります。
3. 残りの基礎的内用語は、まとめて単語学習の中で覚える。
上記の過程で覚える単語だけでも、
予想以上に多くのことができるようになるのですが、
それでも内用語の語彙が薄いと、
自分が伝えたいと思ったことが十分に伝えきれませんし、
リスニングやリーディングでは未知語が多すぎて、大変です。
ですので、残りの(数百語ほどの)基礎的内用語は、
単語そのものに集中して学んでいきます。
(おそらく皆さんが思い描く単語学習に近いものです。)
単語の発音・スペル・コアの意味・具体的用法・例文を
いくつかのラウンドを経ながら
少しずつ理解度を深めるように覚えていきます。
(始めは、最初の3つだけをつなげて覚えて、
徐々に具体的用法・例文を追加していくような具合に。)
一つ一つの単語の覚え方のコツは
「英単語を使える形で覚るための脳への刻み方」
でもお伝えしましたので、詳しくはそちらをご参照ください。
計画的な単語との出会いを効率化するポイント
上述の最後の項目のように、
単語と、自然な文脈の中ではなく、
特別に用意された教材(単語集など)で
計画的に出会っていくタイプの学習の場合、
その出会いをさらに効率化するためには、
大きく二つのポイントがあります。
- 単語を意味のあるグループにまとめて覚える。
- 一つの単語を知ったら、その派生語も分かるように接辞を覚える。
これらのポイントについても、それぞれ詳しく見ていきます。
単語を意味のあるグループにまとめて覚える。
単語の意味は、一つの単語のものを単独で覚えようとしても、
頭に定着させるのが中々難しいものですが、
その単語と同じテーマの単語とまとめて覚えることによって、
記憶のネットワークがより密なものになり、
忘れにくい形で頭に取り込むことができます。
例えば、感覚に関係する動詞なら、
「see, look, hear, listen, taste, smell, feel, touch」。
物のサイズや重量を表す形容詞なら、
「long, tall, short, wide, narrow, light, heavy」
などのようなまとめ方です。
このような同じテーマの単語の中には、
日本語に訳すと似たような意味を持つ単語
(上でも挙げたseeとlookやhearとlistenのように)
も出てきますので、これらを同時に覚えることで、
それらの微妙な違いと使い分け方も一緒に学び、
実際の場面でも使いやすい形で頭の中に入れることができます。
また上記の形容詞のグループの例のように
反対の意味を持つ対義語のペアを覚えることも多くなりますので、
これも使い勝手のよい単語の記憶につながっていきます。
このようなグルーピングは、基礎的な単語で特に行いやすいので、
英語学習を始めたばかりの方が単語を学ぶ場合は、
主にこのような形でまとめられた単語リスト
(または市販の単語帳)を基に勉強していくのをお勧めします。
(「逆転英語ガイド」で基礎単語を教える際にも、
もちろんこのようなまとめ方を念頭においています。)
一つの単語を知ったら、その派生語も分かるように接辞を覚える。
英単語には、「socialとsociety」や「produceとproduction」
のように似たような字面をしていて、
意味自体も関連性を持っている、
派生語と呼ばれる単語の関係があります。
この派生語を一つ一つ別々の単語として覚えようとすれば、
ただでさえ単語の勉強で圧迫されている
脳の容量をパンクさせてしまいます。
できれば、その派生語のファミリー(ワードファミリー)の
代表的な単語の意味を覚えたら、
その単語を基に他の派生語の意味を類推できるようにしたいものです。
そのための鍵となるのが、接辞です。
接辞(affix)とは、接頭辞(prefix)・接尾辞(suffix)の総称です。
文字通り、接頭辞は単語の頭、接尾辞は単語の末尾につながる、
多くの単語に共通する部分のことです。
例えば、inaccessibleという単語だったら、
in- が接頭辞、 -ible が接尾辞です。
これらの接辞はそれぞれ固有の意味を持っていて、
それを中央の幹となる単語に付け加えて
新しい意味の単語を作り出すのに役立ちます。
上記のinaccessibleの例でさらに説明しますと、
中央のaccess(アクセスする)という単語の幹に対して、
-ibleという接尾辞を加えると、
「〜することができる」という意味の形容詞に変化させますので、
accessibleは「アクセスすることができる」
という意味の形容詞になるということです。
同様に、in- は品詞はそのままにしつつ、
否定の意味を加える接頭辞ですので、
accessibleの頭にin- を足した
inaccessibleは「アクセスすることができない」
という意味の形容詞になるわけです。
このような接頭辞・接尾辞が英語には
それぞれ数十単位であるのですが、
最初に覚えておかないといけないのは、
こちらの接頭辞・接尾辞のリストに載ってる程度の
それぞれ20前後ほどだけです。
この基本的な数十個の接辞の意味を覚えるだけで、
単語学習の効率が数倍以上になり、
今後の学習で数千語〜数万語の差を生み出しますので、
基礎単語を学んでいる内から
早めにしっかり身につけておきたい項目です。
まとめ
さて、ここまで英語の基礎単語との出会い方について説明しました。
どのような単語と出会っていくべきかに始まり、
それらとどのように出会っていくのがベストなのか、
またそれらを英語の他の基礎学習と
どう兼ねあわせて学んでいけばいいのかについても言及しました。
また純粋に単語学習しようとする際の効率化のポイントして、
単語をグルーピングして覚えることや、
派生語を理解するための接辞を覚えることの
重要性についても触れました。
これらの方法を駆使して、最初の2000語ほどを覚えると、
その後の英語学習全般が格段に楽になっていきます。
ぜひ、皆さんがこれらの基礎単語や、
それ以降に学ぶべき単語に「出会う」時も
この記事でお伝えしたようなポイントを
思い出して活用していただければ幸いです。
それでは、また!