AWL (Academic Word List) の解説と収録単語

目次

AWLの解説

AWL (Academic Word List) とは、
ニュージーランドのVictoria University of Weliingtonの
言語学者Coxheadが2000年に論文で発表した、
学術的な文章・講義などを理解するために有用な単語として選ばれた、
_GSL (General Service List, 約2000語の基本単語) _
次に学ぶべき570の単語(word family単位)のリストです。

その特徴として、

  • GSLとセットで学ぶ事が前提のため、AWLにはGSLの単語は入っていない。
  • 学術的と言っても、特定の分野でのみ使われるような専門用語ではなく、
    どの学術分野でも使われる汎用的な単語が選ばれている。
  • 学術的文書の単語出現頻度の約9%をカバーしている。
  • これ以降に作られた分野特化型の単語リスト作成手順の参考にされている。

などのようなことが挙げられます。

AWLのカバー率

GSLの基本2000単語の書き言葉におけるカバー率は、
ジャンルによってだいぶ異なっていて、
学術的文書(78%)・新聞(80%)・小説(87%)と
学術的な文章であればあるほど弱くなる傾向があります。(参照)
それを補うためにAWLの570単語を覚えると、
それぞれのカバー率を9%・4%・2%上げることができ、
合計では次のようになります。(参照)

  • 学術的文書(78% + 9% = 87%)
  • 新聞(80% + 4% = 84%)
  • 小説(87% + 2% = 89%)

(ちなみに話し言葉の場合は、
90%(GSL) + 2%(AWL) = 92%となります。)

さらに、学術的な文書に限って言えば、
GSLの1001~2000番目の約1000単語なら5%弱しかカバーできないところを、
AWLの570単語では9%もカバーできるので、
AWLの方を覚えたほうが効率がよくなっています。
このことからも、AWLの学術分野での有用性がよく分かります。

GSLの古い部分を補う基本単語としての役割

また、アカデミックとは言っても、
AWLには日常的に使われている単語も多数含まれていて、
GSLの基本単語としての役割を補っている部分もあります。

その理由の一端には、AWLの作成ベースとなったコーパスが1990年代と、
GSLの改訂版(1961年)と比べても格段に新しいことが挙げられます。

このため、GSLの時代には低頻度の単語と思われていたものの、
現代では実は基本単語であったという単語もAWLでは多数拾われています。
現に、90年代以降にできたBNCコーパス(合計1億語)の再頻出語2000語の中に
AWLの単語が225語も登場
しています。
(例:area, compute, design, energy, finalなど。)

AWLの語彙学習プロセス・戦略の中での位置づけ

このように、学術分野での有用性とGSLの古さを補うAWLは、
GSLの2000語を覚えた後に、学習に取り組むべき標準的な単語リストして、
語彙教育の世界では広く知れ渡っています。

GSLとAWLを学んで、ある程度習熟した後に、
専門分野の学習に必要な専門用語を学んだり、
TOEICやTOEFLなどの試験に頻出するGSL+AWL以外の単語を学ぶことで、
最小限の労力で各自の目的に合った語彙を獲得することができるわけです。

GSLとAWLのセットにも改善すべき点は
専門家からも多々指摘されていますが、
このような語彙学習戦略のコンセプトを成立させるための
具体的な単語リストの開始点としての位置を確立したAWLは、
これからもその価値を評価され続けていくと予想されます。

AWLの作成手順について

AWLはその収録された単語の内容だけではなく、
その単語リストの作り方に対する考え方までもが
その後に続く分野特化型の単語リストの参考にされています。

そのため、ここでも参考までにAWLの作成手順の
大まかな流れをまとめていきたいと思います。

AWLの基になったコーパス

AWLの制作者のCoxheadは、1990年代の英語の学術的文書
(教科書・論文・書籍・Web記事など様々な形態のもの)を414件集め、
人文学・商学・法学・科学の4つの学問分野で
分量が均等になるように揃えた合計350万単語のコーパスをまず作りました。
(ちなみに、その文献の8割近くはニュージーランドからのもの。)

さらに言えば、4つの学問分野をそれぞれ7つの専門分野(subject area)
(例えば科学なら生物学・化学・情報科学・地理学・地質学・数学・物理)
に分けて、つまり合わせて28の専門分野に分けて、
それぞれの文献からの単語数がほぼ等しくなるように調整されています。

(参考:公式サイトによる説明(英文))

AWLの単語の選定基準

上記のコーパスを基に、特定の学問分野の専門用語に偏らないようにしつつ、
学術分野で頻出する単語を(word family単位で)選定するために、
次のような条件を満たす単語がAWLに収録されました。

  • GSLには入っていない。
  • 固有名詞(人名・地名など)ではない。
  • 上記のコーパス全体で最低100回は出現する。
  • 4つの大きな学問分野の全ての文書で最低10回は出現する。
  • 28の専門分野の内、15以上の分野の文書で1回は出現する。

このような工程を経て、最終的に570の単語(word family)が選ばれました。
実際の収録単語のリストは、次の項目内のリンク先から入手できます。
(多くのリストが全体を頻度順に10のサブリストに
それぞれ60単語(最後のものだけ30単語)ずつ分けた形で提供されています。)

(参考:公式サイトによる説明(英文))

(ちなみに、AWLの作成で使っている”word family”は
BauerとNation(1993年)の論文でいうところの
レベル6という一番広い範囲の派生語も含めるもので、
GSLの改訂版で使われていたレベル4よりも広くなっています。)

AWLの収録単語リスト

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