フレーズだけで英語を勉強するとハマる3つの落とし穴

前回の「英語のフレーズ学習は英語の基礎と実用英語を繋ぐ架け橋」
でもお伝えしたように、フレーズ重視で英語を学ぶことは、
基礎段階の頃からでも多くのメリットがありますので、
「逆転英語ガイド」でも強くお勧めしています。

ただ要注意なのは、フレーズだけを覚えようとして、
その他の発音・文法・単語を軽視していると、
英語の基礎がほとんど身につかず様々な問題が生じることです。

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英語の初学者がフレーズ学習に気をつけないといけない理由

なぜ、「フレーズ学習」には気をつけないといけないのでしょうか?
特に英語を学び始めたばかりの人は。

それは、英語学習の書籍や教材として「フレーズ集」「例文集」が
数えきれないほど出回っているにも関わらず、
それらのほとんどがそれを活かすために本来必要な
英語の基礎力については全く伝えようとしていないからです。

そのような書籍・教材の数はあまりにも多いため、
英語を勉強し始めようと思った人の目にも止まりやすい上に、
「これなら簡単に勉強できて、すぐに英語ができるようになるかも」
と思わせるようなデザイン・装丁になっているので、
そこから英語を学び始めてしまう人を多く作りだしてしまいます。

そして、それが英語学習の初期に本当に必要な
「発音・文法・単語」などの基礎学習を遠ざけて、
多くの英語学習者のスタートを迷わせる一因になっています。

それらの基礎を抜きにして、フレーズだけで英語を学ぼうとすると
具体的にどのような悪影響が出るのでしょうか?
今回は、そんな英語学習者(特に初心者)の方が陥りがちな
フレーズ学習にまつわる3つの落とし穴をご紹介したいと思います。

丸暗記で覚える項目が多くなりすぎて覚えきれなくなる。

フレーズは、それぞれ一つを覚えるのは確かに楽なのですが、
基礎的な文法事項や単語の用法の知識を習得せずに
フレーズだけで様々な状況に対応しようとすると、
その状況ごとに少しずつ違う膨大な数のフレーズを
丸暗記しなくてはいけなくなります。

文法・単語・発音の知識があればそれらを活用し、
似たようなフレーズをパターン化するなどして
記憶にかかる労力を省けますので、
新しいフレーズも楽に覚えていけます。

しかしそれらの基礎知識が無ければ、新しいフレーズを覚えるたびに
ほぼ一から新しい知識として頭に入れないといけないので、
覚えるべきフレーズの数自体も多くなる上に、
一つのフレーズを覚えるためのコストも上がるため、
フレーズ学習にかかる全体的な労力ははね上がってしまいます。

例えば、

  • Can you take a picture of us?
  • Can you show me the way to the nearest supermarket?
  • Can you bring us a bottle of red wine?

などは、全て”Can (you) 〜 ?”という
大きな単位のフレーズでパターン化できれば、
ほんのわずかな記憶量ですぐに覚えられますが、
単語や文法の知識がほとんど無い状態で
これらの例文を個別に丸覚えしようとしたら、
どれだけ大変か想像いただけるでしょうか?

文法・単語・発音の学習をおざなりにして
フレーズだけの学習を力技で進めていこうとしてしまうと、
せいぜい200から300程度の短めのフレーズを覚えるのが限界でしょう。

最低限の旅行英会話や挨拶がわりの会話を
乗り切ることくらいはできるかもしれませんが、
それ以上を目指すのは厳しい状況となりますので、
英語力がすぐに頭打ちになる原因となってしまいます。

自分の知ってるフレーズでは伝えられないことを伝えたい時に完全に詰まってしまう。

仮にものすごく記憶力がよい人がいて、
数万個のフレーズを状況別に覚えることができ、
普段の仕事や生活を英語で送るのにも
ほぼ不自由ないほどになれたとします。

しかし、そんなありえないくらい理想的な人でも、
伝えたいと思うことが覚えたフレーズだけでは
伝えられないということは必ずあります。

そのためのフレーズを知らない場合ももちろんありますが、
その考えが日本の文化や言葉に根づいていて、
英語ではスッキリと表現できない(=英語のフレーズがそもそもない)
という場合もあります。(例: 「いただきます」など。)

そんな場合、もし既製のフレーズだけに頼っていますと、
コミュニケーションの途中で完全に言葉に詰まってしまいます。
本来そんな時は、より平易な言葉で言いかえることを試みたり、
文化的な違いを長めの文章で説明してみたりと、
かなり柔軟に英語を使って対応していかなければいけません。
そんな時こそ文法・単語の基礎が不可欠なのです。

ほとんどの日常のコミュニケーションは
フレーズベースでも事足りる状況もありえますが、
いざという時に自分用にカスタマイズした英文を作るための力として、
文法・単語の基礎力はやはり欠かせません。

日本語で伝えたいことを考えてから、それに対応するフレーズを思い出して使おうとする悪い癖がつく。

フレーズに頼りすぎた学習の抱える最後の問題点は、
フレーズ学習の持つ「意味が限定されて覚えやすい」
というメリットが逆効果となり、
英語表現を頭の中で構築する力が育ちにくくなるということです。

つまり、フレーズ単位でばかり考えていると、
「日本語で言いたいこと → 英語のフレーズ」
という結びつきを強くしすぎてしまい、
英文を紡ぎ出すための本来のプロセスを経る経験が得られず、
いつまでたってもオリジナルの英文を作る力が
育たなくなるということです。

英文を紡ぎ出す本来のプロセスとは何か、
ということについて語りだすと長くなりますので、
ここでは深くは触れませんが、簡単に表すと、

「まだ言語化しきれていない伝えたいことのイメージを思い描く。
  英語の文章を単語・文法・フレーズの知識を総動員して
必要なパーツを記憶の底から引っ張りだしてくる。
  英語として自然な順番にパーツを並べていく。」

のように、頭の中でモヤモヤとした伝えたい概念を、
英語の各種の知識や経験を用いて、少しずつ形作り、
最終的に文章の形にして表に出すというプロセスです。

このプロセスに慣れるためには、
日本語の完成された文章から直接英語に
逐語訳的に翻訳するのではダメで、
日本文が頭の中に浮かんでしまっても、一旦それをバラバラにして、
英語にしやすい形にそれらのエッセンスを抽出してから
英語に構築しなおすという
一見面倒くさい作業をやり続ける必要があります。

それに慣れていくためには、とにかく考えながら英文を書くことを
地道に続けるのが一番なのですが、
「日本語で言いたいこと → 英語のフレーズ」
という短絡的な翻訳だけで済まそうとしていると、
いつまでたっても、どれだけの数のフレーズを覚えたとしても、
上記のようなプロセスで英文を紡ぎ出す力がつきません。

フレーズからフレーズへの直訳が常に悪いわけではないのですが、
視野を広げて自由な英文を構築する習慣をつけるためには、
フレーズのみに頼った英語学習は早めに卒業して、
他の英語の基礎と並行した学習に切りかえなくてはいけません。

まとめ

さて、ここまでご紹介した3点が、
フレーズ学習に偏りすぎながら英語を学ぼうとするハマりがちな
大きな落とし穴の代表的なものです。

それらをもう一度ふり返ってみますと、

  • 丸暗記で覚える項目が多くなりすぎて覚えきれなくなる。
  • 自分の知ってるフレーズでは伝えられないことを伝えたい時に完全に詰まってしまう。
  • 日本語で伝えたいことを考えてから、それに対応するフレーズを思い出して使おうとする悪い癖がつく。

の3点となります。

ただし、これらの問題点はあくまでも、
フレーズ「だけ」で英語を勉強しようとした場合のものです。
英語の他の基礎である「発音・文法・単語」もしっかり抑えながら、
さらにその上にフレーズを学習するのであれば、
これらの問題はほぼ関係なくなり、メリットだらけになりますので、
どんどん積極的にフレーズを学んでいってもらって大丈夫です。

(フレーズ学習のメリットについての詳細は、前の記事の
「英語のフレーズ学習は英語の基礎と実用英語を繋ぐ架け橋」
の方をご覧ください。)

巷で広まっている
「フレーズさえ学べば英語できるようになる」
のような極端な宣伝文句に惑わされることなく、
フレーズ学習の功罪の両面をしっかりと把握しながら
今後の英語学習に活かしていっていただければ幸いです。

それでは、また!

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