新形式TOEIC本番の受験で分かった変更点の実態と対応策【リスニング編】

約十年ぶりの新形式となったTOEICの初回を受験してきました。
その試験本番とその準備の際に受けた模試9セットから分かった
新形式テストの変化の実態とその対応策について
今回はリスニング問題に焦点をあててまとめていきます。

2016年5月29日から始まったTOEICの新形式の主な変更点についての概要は、
2015年11月に発表された「出題形式の変更点」にてまとめられています。

ここでは数多くの変更点が挙げられていますが、
それらの点が実際にどのように変わったのか、
受験者にどのような影響を与えるのか、
そしてどのように対策をしていけばよいのか、
などについては語られていません。

そこでこの記事では、それらの変更点ごとに
上記のような疑問に答えられるように詳しく解説していきます。

そして、今回はリスニングのPart 1〜4についてお伝えし、
リーディングのPart 5〜7については
次回の記事でお伝えしていきたいと思います。

ちなみに以下の解説では、問題の内容の傾向などについては、
主に本番の試験と公式の問題集3セット分(日本2セット、韓国1セット)
を参考にして行いましたが、


それらとは関係の無い、時間配分などについては
それらに加えて国内で発売されている以下の模試形式の問題集5冊(6セット分)

を受けた経験を加味してコメントしています。

では、さっそく行ってみましょう!

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各パートの問題数変更の影響は?

リスニングの各パートの内容は大筋では同じですし、
総問題数も100問と変わっていませんが、
各パートの問題数が次のように変更されました。

  • 1(写真問題) : 10 → 6 (-4問)
  • 2(応答問題) : 30 → 25 (-5問)
  • 3(会話問題) : 30 → 39 (+9問)
  • 4(説明文問題): 30 → 30 (±0問)

この問題数の変更による影響については、
本試験前から次のような疑問点が浮かんでいました、

  • Part 1と2の問題数が減ったことにより、初級者は点を取りにくくなる?
  • Part 3の問題数が増えることによって、疲労度がかさむ?その影響は?

この2つのポイントについて実際はどうだったのか、
それぞれお答えしていきます。

Part 1・2の問題は数が減っても難易度は下がらず

Part 1と2は、TOEICのリスニングの中では比較的楽なパートで、
まだPart 3や4のような長めの英語のリスニングには
十分対応できない受験者にとっては貴重な得点源となっていました。

それが両パート合わせて、40→31問と20%以上の減少ですから、
ここを主な得点源としてた方にとっては大きな変化です。

この2つのパートの問題の減らし方について、

  • 難しい問題を減らして、完全に基礎だけを試すパートにする。
  • 問題の難易度はそのままにして、単に問題数を減らす。

のどちらになるのかが不明だったのですが、
公式模試と本試験を見る限りでは、後者となるようです。

特にPart 2は、逆にやや難しくなってきてるくらいです。
(間接的な返事が正答となる問題の割合が多くなってきています。)

後述のように、Part 3と4も簡単にはなっていませんので、
リスニングパートについては、
どの層の受験者にとっても、全体的に難易度が上がったと言えます。

Part 3の増加による脳のスタミナ消耗の影響が甚大

上記のとおり、Part 3は問題数が30→39問と9問も増え、
放送される会話の数も10→13と3つも増えています。

文字で見るだけだと「少し大変になるかな?」程度の変化に見えるかもしれませんが、
実際に新形式のテストを受けてみると
脳のスタミナ消耗度が想像以上に激しいです。

長時間の生の英語を聴き慣れている私でも感じるほどの違いでしたので、
これもレベルを問わずほとんどの受験者に響いたものと思われます。

新形式の本試験を受験された方のレポートでもそのような感想を数多く見受けましたし、

上記の模試を受けたモニターの方達(TOEIC経験者)も同様の感想を述べています。

この脳の疲労度の蓄積により、Part 3の中盤以降で集中力が落ちるだけでなく、
その後のPart 4を解く際にもその影響が及ぶことになります。
場合によっては、その後のリーディング問題へも影響が残ります。

上級者でも疲労は増えるので短期的に効果の出る対策を取るのは難しいですが、
普段から長時間のリスニングを積極的にするようにしたり、
TOEIC模試を受ける時もできるだけ通しで(少なくともリスニングだけでも)
受けてその時間や疲労度の感覚を知っておくことで
疲労に対しての耐性や心構えはできてくるかと思います。

(放送を聞きながら問題に答えていくなど、
Part 3や4をできるだけ脳への負担を軽くしつつ解く方法はありますが、
新形式特有のものではありませんし、デメリットもあったりと、
実行のためにはさらなる説明を要しますので、また別の機会に改めてご紹介いたします。)

3人会話問題はどうだった?

リスニング問題の変化の3つの目玉である

  • 3人会話問題 (Part 3のみ)
  • 意図(MIC)問題 (Part 3と4)
  • 図表問題 (Part 3と4)

の筆頭となるのが、この3人による会話問題です。

この新タイプの問題については、言及すべきことが多すぎたため、

の記事にて個別に詳しく取り上げましたので、
興味のある方はお手数ですが、
そちらの方を参照していただけるようお願いいたします。

意図(Meaning-In-Context = MIC)問題はどうだった?

Part 3と4で新しく出されることになったタイプの問題に、
意図 (Meaning-In-Context = MIC) 問題というものがあります。

これはどういうものかといいますと、話者の台詞から一言を取り出して、
その一言をどういう意図で発言したのかを問う問題です。

例えば、

What does the man mean when he says, “Sure, there you go.”?

のように引用符内の”Sure, there you go.”の意図を聞かれるわけです。

イディオム的な言い回しはそれほど出題されない

会話の中での意図を聞かれる表現なので、
“a piece of cake”(お安いご用) や “bite the bullet”(ぐっと我慢する)
のようなイディオム的な表現を問われるのかと思われていましたが、
そのような表現がこれまでの所、あまり問われていません。
今後出るようになるのかもしれませんが、
専用の学習をする意味がある程の頻度ではおそらく出ないでしょう。

それよりも、 “sound good” や “wouldn’t mind” のように、
単語の使われ方を知っていれば意味を十分に推測できるような口語表現や、
would, could, should のような助動詞の秘める意味を理解していれば
知識的には十分解けるものを中心に聞かれます。

そういった基本的な会話表現や文法知識を
しっかりと押さえておく
ことが重要となりそうです。

前後の話しの流れや、台詞の声のトーンの理解が重要

知識的には特殊なものは要求されないようですが、
逆に重要になってくるのは会話全体の流れを把握するとともに、
特にその台詞の前後の部分とのつながり
その台詞を話したときの声のトーンを理解することです。

話しの流れを理解するというのは、
元々Part 3や4では重要なことでしたので、
特に新しく注意すべきところはないかもしれませんが、
これで改めて意識する必要が出てきたと言えます。

台詞の声のトーンについては、細かいニュアンスを読み取ることは、
英語の会話に慣れていない内はまだ難しいかもしれません。
けれど、ポジティブなことを言っているのか、
それともネガティブなことを言っているのか

なんとなくのレベルでなら判断がつくと思います。
(感情のニュアンスは世界共通の部分も多いですので。)

そのニュアンスの判断を大まかにでもできれば、
前後の話しの流れの理解と合わせて、
正解にたどり着く可能性を上げられますので、
両面からの攻略をおすすめします。

「問題を解く時には声のトーンを忘れてしまうんでは?」
と思われた方はご安心を。

設問の中で引用された台詞を放送する時には、
会話の時と同じナレーターが同じトーンでもう一度しゃべってくれますので、
いったん忘れてしまってもそこで聞き直すことができます。
(逆にこのことを知らないと急に会話部分のナレーションが
再放送されたと勘違いしてとまどってしまいかねないので、ご注意を。)

意図問題の対策にはどんな勉強をしておけばいいのか?

では、この意図問題には普段の学習ではどういう準備をしておけばよいのでしょうか?

国語のセンター試験のような複雑な意図を問う問題は今後も出ないと思います。
ですので、普通にTOEICの学習をしたり、新形式の問題を解いたりして形式になれつつ、
そこに会話形式の教材、あるいは映画・ドラマ・Podcastのような
英語ネイティブ用のコンテンツを交えた学習を
可能ならば少しずつ取り入れることが対策につながっていくと思います。

(↑は、「映画・ドラマはまだ少し難しい」と感じる人向けの教材。)

ただ、これは中長期的な対策ですので、
すぐにTOEICのスコアを上げたいという方は、
この問題のためだけの特別な対策には時間を割かず、
リスニング力を全般的に上げていく
ようにした方が、
全体的には良い結果が得られると思います。

今のところ、Part 3と4で合わせて5問前後出される傾向にありますので、
仮にそこから専用の対策をしていないがために1~2問ほど落としても、
リスニングで満点近くを狙っているのでなければ、
それほど問題にはならないかと思います。

図表問題はどうだった?

さて、新形式TOEICのリスニングで一番目立つ変化と言っても過言でない
図表問題について見ていきましょう。

これはどういう問題かというと、Part 3や4の設問の上に
以下のような種類の図表が追加で印刷・表示されている問題です。

  • リスト
  • スケジュール表
  • クーポン
  • 商品ラベル
  • 価格表
  • 注文票
  • アンケート結果のグラフ
  • 営業成績のグラフ
  • 地図
  • 間取り図

このタイプの問題では、上記のような図表の内容に関連した質問が
1セット(3問)の内に1問だけ聞かれます。(現状では。)

ただ、図表の内容を見ただけで解けてしまっては
リスニング問題になりませんので、
必ず問題の放送の内容を聞いて理解しないと
正解に辿りつけない
ようになっています。

特にリストやスケジュールが使われている問題では、
必ずといってよいほど会話・スピーチの中で変更が行われているので、
図表を見るだけで得られる情報から導かれる答えは、ほぼ確実に間違いとなります。
(このパターンが周知されるようになると、傾向が変わる可能性はあります。)

図表問題では先読みが必須

今までのPart 3と4の問題は、
3人会話問題であろうと意図問題であろうと、
設問の先読みをしなくても
放送の内容をしっかり聞き取って記憶できれば
問題を解くことは十分に可能でした。

しかし、この図表問題は違います。
先に図表の内容をざっとでも目を通さなければ解くのはほぼ無理です。
なぜなら会話・スピーチがその図表を見ていることを前提に進められるので、
見ておかないと会話・スピーチの流れをつかんだり、
重要な情報の部分を絞り込むことができないからです。

したがって、先読みをする時間が少ない場合は、
最低でも図表の内容とそれに関連した質問文だけには優先的に目を通して
残りの普通の問題は、放送を聞きながら、
または聞いてから解くように対応した方がよいでしょう。

もし先読みできる時間が全く無い場合は、
逆に図表に関連する質問は捨てて、
残りの2問をしっかり解けるように集中した方が得策かもしれません。

図表問題は必ず各パートの最後に出る

最後に、図表問題の出る位置と問題数についてコメントします。

まず、位置は各パート(3・4)の最後に出てきます。(現状では。)
位置が今後変わる可能性は否定できませんが、
3人会話問題と違い図表問題は見ただけで簡単に判別できますので、
たとえ変えられても簡単に対応できるかと思います。

(ただ、難しめの3人会話問題で先読みのリズムを狂わされた直後に
図表問題が配置されるようになるとやや難しくなりますが・・・。)

次に、問題数は(現状では)Part 3と4合わせて5問前後です。
(公式模試3セットと私の受けた本試験のフォームでは5問でした。)

数が結構多いので、全部捨ててしまうと影響が大きいです。
ちゃんと先読みする余裕さえ確保できれば、
視覚情報を持ちながらリスニングができるので、情報取得を耳に頼る割合が減って、
逆に解きやすく感じる場合もあるかと思います。

3人会話問題や、意図問題と違って、
問題集などを解くことによって形式に慣れ、
どのようなことに注意したらよいのかということさえつかめば、
思うほどは難しくはなく対策がしやすい問題ですので、
見た目に臆せず、しっかり取り組んでいただきたい問題です。

その他のリスニング問題の変更点は?

リスニング問題の部分には、今まで挙げたもの以外にも

  • 会話問題の中に、発言が短くやり取りの多いものが加わる。
  • Elisions(省略形: going toが gonnaなど)、 Fragments(文の一部分: Yes, in a minute; Down the hall; Could you?など)を含む会話が流れる。

などの変更点があります。

Part 3でやりとり(会話の往復)が増えるのは、
今までTOEICを数多く受けてきた人ほどその変化にとまどうかもしれませんが、
逆に考えると一つ一つの発言の構造は簡単になり、
意味は解釈しやすくなるということですので、
慣れれば大きな問題にはならないどころか
以前より解きやすくすらなると思います。

elisions や fragments に関しても、
既にPart 2では旧形式でも fragments は使われていましたので、
それほど大きな違和感はないのではないでしょうか?

また、会話やスピーチの中で Ummm… や Well… のような
言いよどみが入るようにもなったのですが、
これなどはリスニング内容を理解するための時間や
放送を聞きながら質問に答えたりするための時間を余分にくれます
ので、
逆に問題が楽になる変更の一つかと思います。
(私の場合でも、実際に楽にしてくれてるように感じました。)

以上のように、これらの問題形式に直接関係のない細かめの変更は、
新形式の問題を十分な量を解いて慣れていったり、
会話形式の教材・素材を普段の学習に取り入れることで
自然に解消できるので、それほど気にしなくてもよいでしょう。

まとめ

新形式TOEICのリスニングの変更点とその実態・対策について
解説してまいりましたがいかがだったでしょうか?

最後にもう一度全体をふりかえってみましょう。

Part 1や2などの得点が取りやすい部分の問題数が減り、
Part 3と4へ新形式の問題が導入された上に、
それぞれの問題の難度も「ほぼ同じ」〜「やや難化」であったために
TOEICのリスニングは新形式になって明らかに難しくなりました。
(満点を取ることも旧形式の満点取得者でもだいぶ難しくなったかと思います。)

また、Part 3の問題数が増えたことにより疲労がたまりやすくなったので、
より楽に解くための方法を模試で練習しながら身につけたり、
長時間のリスニングに耐えられる脳のスタミナの養成などが重要となりそうです。

新形式問題の目玉的な存在の

  • 3人会話問題
  • 意図(MIC)問題
  • 図表問題

の内、上の2つは短期でできる事前対策は行いにくいですが、
中長期的には会話をメインに扱った教材を普段の英語学習に取り入れることにより、
自然と解きやすくなってくるタイプの問題です。
これらの問題によりTOEICのための学習にも、
実際の口頭コミュニケーションに役立つ学習を促す
ことにつながっていますので、
試験本来の目的に立ち返るよい改定だと言えます。

図表問題は、今までより多くの情報量の先読みが必要なため、
事前の準備を何もしないと間違いなく戸惑うことになる問題です。
ただ、模試などで図表のパターンとそれぞれからの情報の読み取り方に一通り慣れれば、
それほど支障なく解けていきそうな問題ですので、
捨て問題にはせず得点源にするくらいのつもりで
取り組まれた方がよいかと思います。
(今後情報が蓄積していけば、対策はより楽になっていくタイプの問題です。)


今回は、問題を解く際の具体的なコツについては触れませんでしたが、
そちらの方は

にていくつか触れていますので、そちらの方をぜひご覧ください。

新形式TOEICのリーディングについては、

こちらの記事でまとめましたので、そちらの方もどうぞ!

それでは、また!

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